月刊アイソス連載記事「包材のポジティブリスト化」

月刊アイソス(https://www.isosms.info/)で2019年10月から連載中の「包材のポジティブリスト化」に関する投稿記事を公開しております。食品衛生法の一部改正に伴い、HACCPの制度化と同様、食品業界から注目されている改正点の一つです。業界記事の中には明確な記載はございませんが、投稿文は全て当協会の個人会員様によるものとなっております。

包材のポジティブリスト化 食品に関連する産業全体へのインパクト

月刊アイソス 10月号 執筆 / 渡辺 寛(当協会 社内監事)
「連載第一回 日欧米における食品用器具及び容器包装の法規制。日本のポジティブリスト制度化の概要と対応のヒント」

月刊アイソス 11月号 執筆 / 新井 万由(当協会 個人会員・講師)
「連載第二回 衛生プロバイダーから見た包材ポジティブリスト化への対応 ~成分分析と衛生監査~」

月刊アイソス 12月号 執筆 / 石井 暁子(当協会 個人会員)
「連載第三回 小売りの立場から包材のポジティブリスト化への対応として考えられること」

「月刊アイソス 2020年1月号」以降も連載予定

【HACCP】ビジネスホテルにおける朝食バイキングでの衛生管理手順書

「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」の手引書

月刊「食品と科学 2019年10月号」に掲載された、「ビジネスホテルでの朝食バイキングに関してのHACCPの考え方を取り入れた衛生管理手順書」となります。ご自由にご閲覧、ダウンロードして皆様の現場でご活用下さい。

『食品と科学 10月号』 (購入する)

  • 出版社名:食品と科学社
  • 発行間隔:月刊
  • 発売日:毎月25日
  • サイズ:B5判
下記にコメント欄を設けておりますので、よろしければご感想をお寄せ下さい。
前編 HACCP後編後編

【和訳】アメリカの医療制度は、ピーナツを4200ドルで売る方法を見 つけ出した

The U.S. Health-Care System Found a Way to Make Peanuts Cost $4,200

アメリカの医療制度は、ピーナツを4200ドルで売る方法を見つけ出した。

ピーナツは 特別な危険性をもつ豆です。小さなかけらであっても ピーナツアレルギーの人なら殺すことさえできます。救命措置をおこなったとしても 脳に恒久的な損傷を与えることすらあるのです。このように重篤なアレルギーは比較的少数ですが どのような反応が起きるのかを予測するのは困難です。ある時には 間違ってピーナツのかけらを食べてしまったとしても わずかな痒みが出るだけかもしれませんが、次に食べたときには 気道がつまり あなたが呼吸をするためには 誰かがアドレナリンのたっぷりはいった注射針をあなたの脚に突き立てないといけないのです。

アメリカでは、毎年4人のピーナツアレルギーの子供が ピーナツに反応して亡くなっています。しかし、わずか4人であるからといって、最悪のケースが起きたらどうしようと恐れている(アレルギーを持つ)何百万の子供や その両親を安堵させるものではありません。結果として、学校のカフェテリアの多くで すでにピーナツは歓迎されるものではなくなっています。一部では 公共の場所ではピーナツを禁止すべきだとの主張をする人まで出てきています。ブルックリンで子供の誕生日パーティーにピーナツを持っていったとしたら 二度とどのパーティーにも呼んでもらえないでしょう。

子供がピーナツに触れることがない状況というのは しかし 却って予期しない結果を導きだしてしまっているようです。ピーナツアレルギーは増え続けているのです。最近の推定では アメリカでは2から5%の子供がピーナツアレルギーといわれています。アナフィラキシーショックを起こして緊急外来に運び込まれる数は 2008年から2012年の間で倍増しています。免疫システムがピーナツを許容することを学習していない場合には、最初にピーナツに出会った時に激しく反応する可能性が高くなります。そのため 最近のガイドラインでは 子供が小さいときに両親はピーナツを与えるべきと推奨しています。ピーナツアレルギーを生起してしまった子供たちには、似たような、しかし物議をかもしかねない治療法が、現在、食品医薬局によって承認されようとしています。食品医薬局は 本日 薬品会社とその立場を擁護する者たちよりの聴取を行っており、数か月後には最終決定を出してくるものとみられます。

ピーナツアレルギーに関しては現在 有効な治療法というものがありません。そのため患者はピーナツの摂取を避けるようにと宣告されるだけです。患者たちは 注射器に詰められたエピネフィリン(商標名:エピペン)を処方され、必要となればそれを注射するようにといわれるだけです。ここ数十年の科学と技術の大幅な進歩にもかかわらず、患者を抱える家庭には アレルギーが治療可能であるとか、少なくとも緩和できるといった安心につながるものは全くありませんでした。それも本日まで、新しい治療法では患者の免疫システムを・・・ピーナツを与えることで・・・再構築しようとしているのです。危険な響きがあるかもしれません、実際に危険です。

経口免疫緩和療法と呼ばれるものですが、患者にごく微量のピーナツを与えていくと 患者は徐々にピーナツを許容できるようになるのです。免疫緩和療法は 例えば花粉症の様なアレルギーに対しては一般的で、花粉などを注射し、ごく微量のアレルゲンたんぱく質を注射することで 免疫系がアレルゲンに慣れてきて、患者は呼吸時の苦痛から解放されていくというものです。

しかしながら ピーナツを使用しての経口免疫緩和療法はいまだ試験的な段階にあると考えられ、どの専門機関であっても 両親がアレルギー患者に対してピーナツを与えることを推奨していません。自己流の危なっかしい処方での治療が行われていることもありますが そういう治療行為を観察して 医師達の多くは危険であると感じています。死に至るような反応が出るといった可能性もあり、一部では 研究施設の外でこのような治療が行われるべきではない との思いを強く持っています。

1990年台末にピーナツアレルギーを その抽出物を注射することで治療しようとする試みがありました、ピーナツ液の注射です。しかし 医療試験の最中に患者の一人がアナフィラキシーショックで死亡したことから(ラベル間違いがその理由と報告されています)試験は中止され 医療現場には一時的ではありましたが この療法を実施することに対する恐怖心を植え付けました。2000年台にデューク大学で再度同じ方式が着目され、今度は経口的な投与が選択されました。彼らは概念実証研究を発表し、その中でアレルギーマウスが粉砕したピーナツの極微少量を与えることで、アレルギー症状が軽快することを示しました。

これを人間にも延伸してみることを強く願い、食品アレルギー界の重鎮たちが2011年にボストンに招かれ、構想を前に進めることになりました。食品アレルギー研究教育機関(FARE)(と呼ばれる非営利の提唱とロビーイングを行う団体であって、一部、薬品業界からの活動資金の提供を受けている)が、患者代表、デューク大学や多方面からの研究者、行政、産業界メンバーによる、垣根を越えた合宿会議を開催しました。このグループは 経口緩和治療研究を科学者が安全に進めていくためには どれくらいのピーナツが与えられたのかを正確に知ることのできる標準化された処方箋が必要だとの結論を導き出しています。

「問題点は この処方は薬品会社が通常生産しているようなクスリといったものではなかったことです」概念実証研究に参加したアレルギー専門医の一人、ブライアン・ビッキーは説明します。しかしながらもまた 食品そのものというわけでもなかったのです。「ライセンス生産に当たるものも全くない それは なんと 単なるピーナツの粉だったのです」

多くの薬品会社にアイデアを募ったあげく FARE自身が その後アイミューンと名前で知られることとなる会社を見つけ出しました。アイミューンはカテゴリー上は薬品会社ですが 食品を基材とした治療に傾注しています。このような製品は食品医薬局によって所轄され 医薬に分類されていますが、その中でも新規の成長分野であるバイオ医薬とされます。つまり、生命体に由来する医薬であり、例えば、細菌のたんぱく質からできたワクチン、人体で生成する生理活性物質でできたインシュリンです。アイミューンの場合では、バイオ医薬は、つまりカプセルに詰めたピーナツの粉ということになります。この会社は 1億6千万ドルのベンチャーキャピタルファンディングの公募をおこなったのち 2015年に上場しています。

2016年にビッキーは デューク大学を離れ 常勤でアイミューンに勤めることとなりました。そこで彼は、ピーナツ粉を使用しての治験を監督しています。約250名のピーナツアレルギー患者 2グループに ピーナツ錠またはプラセボを毎日投与し、一年間以上にわたってその影響をモニターしました。治験終了後に 患者たちには少量のピーナツが与えられ、徐々にその量があげられ、最後には2粒のピーナツまで増量されました。研究者たちは アレルギー反応を起こすまで どれくらいの量が必要かを観察したわけです。プラセボを与えていたほとんど全員の患者は 2粒に至る以前の段階で反応しましたが ピーナツ粉錠を投与されていた群では 3分の2が2粒を問題なく食べることができたのです。

ビッキーは、現在ではアトランタ州小児健康管理の食品アレルギー部門を統括していますが、昨年11月、ニューイングランド医薬ジャーナルで、その研究における知見を公開しています。共同研究者のもう一人はアイミューンのスタッフとしてとどまっています。研究者が医薬品メーカーから資金供与を受けることは稀ではありませんが 研究対象である製品を作っている会社の採用となることは頻繁には起きていません。

この単独の しかし 一年にわたる治験の結果をもって アイミューンは食品医薬局に自社の粉末を医薬品として認可するように申請しています。その名前もピーナツ粉ではなく 医薬品らしく パルフォルチアと呼ばれています。この医薬品は 患者にピーナツを食べる能力を与えるというものではなく、患者が間違って少量のピーナツを摂取してしまった場合に患者の生命を守るのに役に立つというだけの効能を表明しているにしかすぎません。医療アナリストによれば 一年間の治療費は4200ドルにもなり、患者は 治療を永久に続けることすらありうるのです。

2019年9月の投資家へのプレゼンの中で アイミューンは パルフォルチアの販売量は 10億ドルを超えると推定しています。文書のなかでは 暫定的な金額として 薬品代は 年間3000ドルから20000ドルであろうとし 投資家に対しては保険会社がこの薬品を給付対象とすることに合意したと明言しています。販売量は 「認定介護士」や「命にかかわるようなショック症状を心配する親や家族」に支えられています。プレゼンそのものは アイミューンのウェブサイトから 本日朝、削除されたようです(アイミューンは 我々の問い合わせにはコメントしてきていません)。

サウスフロリダ大学の薬事・小児科教授 トーマス・カサ―レは FAREの主任医療顧問でもあります。カサーレは この会社の製品での治験論文では ビッキーの共著者でもあります。筆者はカサーレに 何故ほかの会社が ピーナツ粉を単なるサプリメントとして、数ドルの価格で売りに出せないのかを尋ねました。 小規模ではありますが 2018年の研究では 研究者は一粒の125000分の1の量のピーナツをアレルギーの子供に与えることで 弊害なく 徐々に12粒まで摂取可能にしたという報告があったのです。

 「まあ そうでしょうね」と口を濁しながらもカサーレは、保険適用かどうかが評価の分かれ目と続けました。たとえピーナツ粉であってもそれが食品医薬局認可の医薬品となれば 医者は その処方箋を出し その投与を監督することで 収入が得られるわけです。対して 非認可方式での経口緩和治療を施す医師たちでは 患者は治療費をすべて自らの支出でカバーしないといけません。これこそが 多くの患者から 緩和治療を遠ざけている理由です。つまり 治療の広範な実施のためには その治療が保険給付制度と一体化することが必要ということです。この制度との一体化とは 製薬会社と医師たちが 保険会社に単なるピーナツ粉の代金として何千ドルをも請求できるシステムであるわけです。

サンフランシスコにあるカリフォルニア大学の内科医兼保健政策アナリストの ジェフ・タイスによれば「患者たちは絶望の淵にあり、恐怖感すら抱いているため 巨大な需要がそこにはあります」「保険会社は この医薬品が急速に採用されていくだろうという見通しをもとに その巨大な請求額というインパクトに自らを備えつつあります」

急速な かつ広範な需要が巻き起こるということは その安全性に関する懸念をも顕著にしていきます。タイスは 研究チームを結成し この製品に関する詳細報告書を 医療経済検証機関に提出し、その中で この製品は明確な効能がないのに広範に使用される可能性があると結論付けています。タイスによれば この薬は重篤なアレルギー症状のリスクを低減するわけではないので食品医薬局認可には根拠が不十分という結論となります。

ニューイングランド医薬ジャーナルで強調されていなかったのは 患者がこの薬を服用し始めた時期には 重篤なアレルギー症状を示す率は6倍にまでなっていたと言う事です。試験室レベルではピーナツ錠剤摂取グループは ピーナツを2粒まで食べることができるようになったのですが 試験室の外では 14%の患者たちは ピーナツ成分の摂取に起因するアレルギー反応に苦しみ これはコントロールグループ(アレルギーでありながら ピーナツ錠を摂取していなかった群)の3%に対峙しています。「このような症状こそが 我々医師が防ごうとしているものであって、例えば緊急外来に運び込まれたり 学校で間違って飲み込んでしまったりとかの事件に相当するような結果です」「治験では 確かに緩和効果を示しました、しかし それを上回る弊害を示したうえ長期の効果の不明瞭なものに終わっています」

4月には、ランセット誌がメタ分析をもって同様に結論しています。非常に高い確度で、ピーナツの経口免疫療法は、アレルギー症状やアナフィラキシーショックを、除去療法やプラセボ摂取群に対して、相当の割合で増加させると結んでいます。食品医薬局委員会は この薬の使用目的を 患者の偶発的なピーナツ摂取においてアナフィラキシーショックに至るリスクを軽減するものとして認可の検討対象としています。「しかし この薬を摂取した患者では このリスクが増大しているわけであって、減少などしていないのです」

タイスは続けます「アナフィラキシーショックの増大が 患者が医師団に守られているといった安心感を盾にピーナツを大量に摂取してしまったためなのか それとも薬自身のためなのかを判断することは不可能です」。管理体制下での治療は 患者たちに実際の社会の中にいるよりも 自分
が守られているという錯覚を生じさせるものであるからです。やわらかめな表現を使用しても(アナフィラキシーショックの増大は) アレルギー物質への感受性が下がるというメリットなど吹き飛ばしてしまうものでしかありません。他の言い方をすれば 総体的には 何十億ドルもするピーナツ粉は ピーナツに対する重篤なアレルギーを増やしてしまうだけの結果に終わるのです。事実を言えば この薬はだれもが知っている一般薬に 今まさになろうとしていますが そこにはエビデンスといえるものはほとんどなく、単に医薬品が認可される様式の大きな変容を反映しただけに終わっているのが実態といえます。旧来の様式では 薬が認可されるまでには 二回の治験を通して 安全であり有効であるという結論が得られたものでなければならないというものでした。過去数十年の間に 食品医薬局は その手綱を緩めて 有意であろうと有意でなかろうと 効果に関する多少のエビデンスの提示しか要求しなくなってきているのです。患者の少量へのピーナツへの感受性を和らげるからといって パルフォルチアが 患者の寿命を延ばすわけではありません。また この薬が 患者を 入院を必要とする事態から遠ざけたり 重篤なアナフィラキシーショックから守るわけでもありません、(食品医薬局は 現在実施している聴聞会に関してのコメントはしませんが 食品医薬局の聴聞委員会は 本日 このような懸念を表明するものと思われます。)

ビッキーは もうアイミューンの常勤ではありませんが 次のように認めています「高価な治療ではあるが 我々は パルフォルチアが期待されている効果を上げうるかすら知らずに実施している。」しかしながら 彼はこの認可が意味するところは ピーナツ粉などよりはるかに巨大であって 「もし 仮に スタートアップ間もない企業が 1000人程度の治験を行い ピーナツアレルギーの認可治療薬として その製品を市場に出すことができるのであったら・・・」投資家はこの分野に蝟集してくることだろう。 過去には 何年もかかり 数次の治験を経て 研究と開発に数百万ドルもかけて初めて市場に出せていたのが医薬品なので 「もしこのような最初の製品が認可されないとしたら この分野では大きな後退が起き」慎重な投資に誘われていくだろうと ビッキーはあくまでも楽観的な見方を崩さない。

もちろん あわただしく認可され 採用された薬で患者に危害が起きるようだったら さらなる後退がおきるだろう。筆者が話した誰もがピーナツアレルギー治療の必要性とその需要を強調していたが 患者の代弁者は 効能よりも害の多い クスリの認可を推進する折には 忍耐強さには欠けるもののようだ。

この稿へのご意見は 編集者または letters@theatlantic.comに 文書での提出をお願いしたい。

訳者注記

経口緩和治療は 現在 唯一有効なアレルギー治療といわれ イギリスなどでも広範に採用されています。確かに 相当な割合で効果を上げ 患者が 除去食を必要としない生活に戻れた わずかな量であれば 問題ないというところまで改善することも多いようです。しかしながら まったく効果をあげない例も多く存在し 万能であるとは言えないところが この治療の難所です。いくら頑張っても まったく改善しなかった苦労しただけに終わったという例もまた存在するのです。ピーナツアレルギーの場合 症状が激越であることが多く 治療中に引き起こされるアレルギー症状のデメリットのほうが 改善効果のメリットなど打ち消してしまうと言う事も大いに考えられます。この記事は 社会としてのメリット・デメリットを総和して治療法が採択されるべきだとの総体的なリスクマネジメントを提唱している点で、傾聴に値します。

【和訳】食品加工や製造に使用されているシステムが特に狙われやすい

Food Safety Tech というサイトに9月12日付で 同紙記者による「食品安全に関する サイバー攻撃の脅威が高まっている」と題した記事がありましたので 和訳いたしま す。 副題として「食品加工や製造に使用されているシステムが特に狙われやすい」と降られています

Threat of Cyberattacks to Food Safety on the Rise


記事本文: ミネソタ大学の食品防御研究所によって 新しい報告書が発刊された。 その報告書によれば 食品産業はサイバー攻撃に狙われやすい、食品会社は セキ ュリティーとITシステムを強化する必要がある とのことである。「食品そのものもだが 、加工工程や製造工程もまたサイバー攻撃によって汚染されうる」“Adulterating More Than Food: The Cyber Risk to Food Processing and Manufacturing”、食品 会社でその加工工程や製造工程に使用されるシステムは 攻撃対象として 選定さ れやすい状況にある。よく攻撃対象に選ばれている産業の側でサイバーセキュリティ
―を向上していけばなおさら その代わりの好餌となる可能性がある。

「食品産業は ファイナンス、エネルギー、ヘルスケアなどと違って 費用の掛かるサ イバー攻撃の対象からは外されてきた」と この報告書の主筆である ステファン・スト レングは ニュースリリースの中で言う。「しかしながら 今まで攻撃対象とされてきた 産業で防御を固めていくと 攻撃は より簡単に侵入できるターゲットを探し始めるだ ろう。この報告書では 食品会社が今後立ち会うようになるであろう事態を理解し自分たちを守る方法をいかに構築していくか考えていくための助けとなることを願っている」

報告書では 2011年に研究者と製造者側で 産業界の制御システムの中に200以上 の脆弱点のある事を発見したと述べている。様々な調達先から提供されている要素 の中に 多くは 旧式なオペレーティングシステムや 乗っ取られやすいパスワードと いった形で組み込まれていることが多い。まとめ上げて言うと「会社の側で 自分の産 業の制御システムとITシステムがどう関連しているかの知識が欠如していることが多く、それがサイバー攻撃のリスクと脅威の把握の不足につながっている」と報告書は 特記する。

自分は小さな会社であるから狙われようもない と安心してはいけない と報告書は 警告する。報告書によれば アメリカの食品製造者の74%は20名未満の従業員しか 雇用していない、しかし ソフトウェア会社であるシマンテック(株)によれば 小さな会 社は 大きな会社と同じくらい、時には それ以上に攻撃対象とされている。 食品会社が どうやってこのリスクに対処していくのか?報告書は 全社で次のような 重要なステップを踏んでいくことが必要と述べる。

  • OT(生産技術)システムとIT(情報技術)システム担当者の間の溝を埋め お互いの コミュニケーションを促す
  • 在庫管理システムと ITシステムのリスク評価を行う
  • 在庫管理システム機器を購入・配置していく際に サイバーセキュリティ―の知識を持つものがメンバーとして入っていることを条件とする
  • サイバーセキュリティ―を 食品安全および食品防御カルチャーに組み入れる。

報告書全文FPDI’s full report はFPDIのサイトに置かれているので参照を。


訳者注:
記事になると 食品産業で恐ろしいことが今すぐにでもおきますよ というニュアンス で 読者の眼を引くような語りとなっていますが 報告書全文を読めば この結論は 食品産業界単独に対する警告ではなく もっと淡々とした 例えば在庫管理システム が外部の調達先にも開放されている、外部の人間が簡単にアクセスできる管理体系 であった場合 サイバー攻撃は 誰に起きても不思議ではないという論調です。


とくに 記事で黄色にハイライトした個所は報告書本文では


research by Symantec indicates that for 2015–17, small business were targeted at least as often, if not more, than large businesses


シマンテックによる調査では2015-2017年の間、小さな会社は大企業に比べて多い とまではいわないまでも同じくらい狙われた・・・であって 記事には意図的な誇張が 入り込んでいます。また、FPDIが引用した シマンテックの調査報告書でいわれてい るのは小さな会社の従業員は(会社のインターネットセキュリティーが充実していない ため)有害ソフトやスパムメールにさらされる割合が多いであって、決して在庫管理シ ステムそのものへの攻撃が多かったということではありません。

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垂直方向の汚染防止、水平方向の汚染防止

海洋大学の博士論文に 垂直方向・水平方向の汚染対策に深く言及しているものを見つけました。
 
 
お忙しい方のために要約を。
 
 総括

 第 2 章で、すしチェーン店 A 社で問題となった大腸菌汚染について、汚染経路が 2 経路あることが判明した。
 
1 つは調理器具の床への直置きなどによる床面から作業台へ汚染が移行する垂直汚染、
2 つはダスターなどによる汚染拡大(水平汚染)である。
 
その結果、両方の段階について対策を講じることが重要であることが分かった。
 
また、ダスターにおいて、大腸菌群の検出は一般生菌数の多少に比例しているが、大腸菌の検出は一般細菌数の多少に関係しないことから、一般生菌・大腸菌群と大腸菌は異なる経路で侵入していると推定された。具体的には、一般生菌、大腸菌群は野菜などの原料から店舗に入り、人由来と思われる大腸菌は地面から靴などを介して店舗に入ってくると推定された。そこで、当面 4 つの対策
 
  1.  垂直汚染を遮断するための調理器具の床への直置き禁止
  2.  汚染拡大(水平汚染)を遮断するためのダスターの管理(使い捨て)
  3. 垂直汚染、汚染拡大(水平汚染)を防ぐための定期的なアルコール噴霧の実施
  4. 店舗外からの汚染を遮断するための靴の履き替え
を行うこととし、その有効性を 364 店舗の実地調査により確認した。
 
また、各店舗におけるパート・アルバイトを年齢、入社後の年数などで層別解析したところ、10 代の若い学生アルバイトグループと、60 歳代以上の男性グループにおいて、手洗いが不十分であることが分かった。
 
です。
 
実際の寿司チェーンでの検証がなされており 空理空論とは違った迫力があります。

【和訳】発症までに時間のかかったノルウェーでのサルモネラ食中毒事件

出典:Food Safety News(August 30, 2019)
訳者:広田鉄磨

By Joe Whitworth on August 30, 2019

2017年に ノルウェーのオスロ空港で起きたサルモネラ食中毒事件をもとに 研究者たちは 潜伏期間が長い場合もあることに注意を払う必要があると警鐘を鳴らしている。

2017年9月 単相のサルモネラ・ティフィルリウム属群が ノルウェー国立腸管病原性参照研究所によって特定された。journal Eurosurveillance. によれば 症例の広域分布は 当初 国内全域に配送されている食品の関与を疑わさせた。

発症までの潜伏期間は ゼロから16日で、事件が長期化するにしたがって 潜伏期間が長くなっていった。おそらくは 対策が実施されていくにしたがって 患者が暴露された菌の数が減少していったものと考えられる。サルモネラ菌での典型的な潜伏期間は 6時間から72時間といわれている。

研究者たちは 営業停止と調理場の刷新といった すでに確立されているような環境汚染対策をもってしてだけの衛生管理強化では 汚染源を除去することはできなかったと指摘している。

ジョー&ジュースカフェ

21名の患者は オスロ空港のジョー&ジュースカフェで 食事や飲料を摂った。このカフェは セキュリティーエリアの外にあり 空港を訪れる者であればだれでも利用できる。汚染菌は 汚染された食品または 感染した従業員によって持ち込まれたとみられる。

このカフェでは大量の生鮮食材が加工されているが カフェを経営する会社は ヨーロッパで7か国 ヨーロッパ以外でも事業所をもち グローバルなチェーンの一部として このカフェは運営されている。

患者のうち13名は女性で 年齢でいえば 17歳から60歳であった。患者は ノルウェーの10カウンティ―(県のようなもの)に散らばっていた。国際的な問い合わせをしてみても ノルウェー以外のヨーロッパの国々で症例の発生はなかった。

16の症例の発症時期は特定されており 2017年の8月23日から 11月8日まで広がっていたが 最初の週にほとんどが集中していた。15症例で暴露日と発症日が特定されており 潜伏期間は ゼロから16日で、事件が長引けば長引くほど 潜伏期間もまた長くなる傾向が見られた。8月の潜伏期間のメディアン値は4.5日(分布幅:ゼロから5日)、9月以降は 9日(分布幅:2日から16日)であった。

8月22日から28日までの 初期のケースでは カフェに8月中旬に導入された汚染が原因であったとみられる。続く数週間の間 営業は継続されており その間 客や従業員は その汚染に継続的に暴露されていたと考えられる。8月から11月にかけての 潜伏期間の伸長は 汚染源が(食品起因ではなく)環境起因となり 客はサルモレラに暴露されているものの その菌数は減少していったものとみられる。

2017年9月中旬 ノルウェー公衆衛生機関に属するノルウェー国立腸管病原性参照研究所の人間部門が 反復配列多型解析法が 非常にまれなパターンを示していることを解析した。ノルウェーの5つの市に居住する患者は 発症の前の週には国外旅行をしていなかったと報告していた。

最初の4ケースについて 19ページからなるサルモネラ専用のトローリング調査にかけてみた。この調査ののち 調査を 興味のある分野に絞り込み そこには発症前の国内旅行とオスロ空港のカフェでどのようなものを食したかの質問を含ませておいた。

21ケースのすべてで 2017年8月18日から10月13日の間に カフェで食事または飲料を摂ったことが 明らかになった。患者たちが食したものは 少なくとも 3種類の違うサンドイッチ、7種のフルーツであって 調査したすべてのケースに共通する食材というものはなかった。

 カフェは何度も営業停止し 再開していた

環境のふき取りと食材サンプルが 9月の現地踏査時、および11月の環境拭き取り時にノルウェー公衆衛生機関によって集められた。調理場の排水 水道蛇口、鉄製の棚の上の水滴の合計6つで 症例原因菌が陽性と出た。 10個の食材サンプルはすべて サルモネラは陰性であった。

「調査によって カフェにおける衛生管理のための定常作業の弱点のいくつかが特定された。それには 調理場の清潔区・汚染区の仕分け、作業の目的に応じた洗剤の選択、どのシンクで手を洗い、食材を洗い、皿を洗うのか といったところが注意されるべきであろう。また ユニフォームの洗濯が適切でなく 工程や原材料に関連する潜在的な危険性の評価や管理が欠如していたといわざるを得ない」と調査書は結ぶ。

10月には 会社が集めた環境サンプルが 民間の試験室に送られ分析され、結果は ノルウェーの獣医学研究所に送られて検証を受け、NRLとNIPHで型の特定を行った。カフェの運営会社からは どの食材問屋から食材を調達しかたの記録が提出され いくつかはノルウェーの外からであった。

9月22日に カフェは 10月13日の再稼働まで 暫定的な営業停止を行った。しかし 10月14日に は確定前の予備試験で陽性と出たため 再度営業停止となった。11月7日には 一検体でサルモネラ陽性が疑われ カフェは再度営業停止を行った。11月8日と15日のサンプルでは陰性であり 11月21日の公衆衛生機関での拭き取りでも陰性を確認した。

研究者たちは 営業会社は管理手段を責任をもって実施し それは自発的な営業停止、調理場の刷新 および隅々までの清掃であったが (いったん環境に住み着いてしまったサルモネラという)汚染源を除去するのは困難であった といっている。

「このケースは 環境由来の汚染というべきで 調理場の排水、水道蛇口、鉄製の棚の上の水滴などから採取したサンプルが陽性であったことから そう推定される。製造環境の踏査で 通常の調理場の衛生管理・食材ハンドリングの定常作業には弱点があることが明確となり そのことが 食材の交差汚染の原因となり 事件の長期化の引き金を引いたと推察される」

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訳者追記: いままで 飲食店の衛生管理は 3種の温度管理の徹底であるとか 衛生区と非衛生区の隔離が重要とばかり強調されていたが、 衛生区とは言え 排水溝のない調理場はないといっていいだろう。また グリストラップの清掃など 調理中にやってはいけないといわれながらも 守られていないことも多々ある。今までと多少目線を変えて 使用水ばかりではなく 使用後の水の管理をも主軸に据えるべきではないだろうか

【寄稿】カカオの育成とチョコレート製造<後編>

(一社)食品品質プロフェッショナルズ 矢野 真理子

チョコレートの製造

 ダークチョコレートは主に、砂糖、カカオマスやココアバターから(ミルクチョコレートの場合、粉乳も)つくられます。製造にあたり、チョコレート中にざらつくような粒子(数十μm以上)を残さないようにする必要があります。微粒化した原材料を使用する場合も考えられますが、工業的にはチョコレートの各原材料を混合してペースト状にした後、レファイナーのそれぞれ回転するロール間の隙間を通して、含まれる固体粒子を粉砕する場合が多いです。粉砕された原料は、コンチェで撹拌回転して練り上げられ、練り上げにより粘度が低下して流動性が付与され、液体のチョコレートとなります。併せて揮発性物質の揮散や均一化による香味変化も生じます。
 液状のチョコレートは、ココアバターが形成しうる複数種類の結晶多形のうち、求める物性の結晶として結晶化させるため、複数段階での温度調整と撹拌といったテンパリングを経て、成型されてから適切に冷却され、チョコレートとなります。

ココアバターの結晶多形とテンパリングについて

 カカオマスには、55%程度の油脂分(ココアバター)が含まれており、ココアバターは他の油脂同様、グリセロール骨格に三分子の脂肪酸が結合した、トリアシルグリセロールの混合物です。うち80%程度が、グリセロール骨格の2-位(2番目の炭素)に不飽和脂肪酸のオレイン酸、1-位と3-位に飽和脂肪酸(主にステアリン酸もしくはパルミチン酸)が結合した構造で、これらが形成する混晶が、多形現象を含めたココアバターの性質を決定しています。
 ココアバターには、6種類の結晶多形が存在し(最新の研究では、うち2種類が中間的な多形で同じとみなせるため5種類との報告もある)チョコレート業界では、1996年にWille and Luttenに命名されたⅠ~Ⅵ型が用いられることが多いです。結晶はⅠ~Ⅵの数字が大きいほど融点が高く、密な構造で安定な結晶です。Ⅰ~Ⅵのうち、割った際の良好なスナップ性とツヤを持つ結晶はⅤ型(融点32~34℃、比較的安定)のみであり、結晶粒径が細かく、口どけがなめらか、室温で溶解しにくく口の中で溶ける融点も含め、テンパリングにおいては、Ⅴ型として結晶化させる必要があります。
 なお、不適切なテンパリングで、Ⅳ型として結晶化させた場合、比較的柔らかくスナップ性がないチョコレートとなり、またⅣ型は時間とともにⅤ型に転移しますが、その際、固体粒子間の油脂が一部表面へと押し上げられ、ブルームが生じます。なおⅥ型(融点34~36℃)はⅤ型より安定ですが、通常の条件で液状のココアバターからは直接Ⅵ型の結晶とはならず、固相転移でのみ生成します。つまりⅤ型として適切に結晶化されたチョコレートも、数か月~数年等の長期保存でゆっくりとⅥ型に転移し、その際ブルームが生じます。

 実際のチョコレートには、砂糖他、ココアバター以外にも原材料が使われるため、分子構造はより複雑です。

2019年5月7日 更新

【寄稿】カカオの育成とチョコレート製造<前編>

(一社)食品品質プロフェッショナルズ 矢野 真理子

カカオの木


先日、プライベートで1時間程度のチョコレートの学習ツアーに参加する機会があり、チョコレートやカカオについて興味のままに調べてみました。自身で十分理解しているとは言い難いのですが、せっかくなので紹介致します。
 なお、メーカーや業界団体等のチョコレートに関連するホームページと「チョコレート カカオの知識と製造技術」(Stephen T Beckett著、古谷野哲夫 訳、幸書房)を参考にしました。しかし、私の独断と偏見で取捨選択、要約や改変等をしています。参考図書には、製造技術、粘度や流動性、分子構造をはじめ、もう少し広範で詳細、かつ正確な内容がわかりやすく説明されています。
 ちなみに写真は、参加したチョコレートの学習ツアーで撮影させてもらった、室内で生育中のカカオの木です。日本だと寒いのでヒーターで温めているそうで、案内員のお姉さんは、自分が案内員として来たときよりも成長していると仰っておられました。

チョコレートの原料 カカオの生育

 チョコレートの原料となるカカオは、中南米を原産とし、赤道をはさんで北南緯20度以内の適正環境地で栽培されます。カカオの木の樹高は12~15メートル程度と比較的低く、熱帯雨林の低層で生育し、商業的農園では、ココナッツやバナナなどを間に植えて陰をつくることが多いです。カカオの木は多くの病気や害虫に晒されており、カプシッド、黒果病、ウィッチズブルーム、カカオポッドボーラー等があります。
 カカオ豆の香味は生産地域により異なりますが、カカオ豆に含まれる油脂も生産地域によって異なり、一般に木の生育地が赤道に近いほど油脂は固い、つまり融点が高い傾向があります。カカオの木には10万個もの小さな花が、枝や幹に咲き、うち一部が5~6か月程度で、10~35cm(200gから1kg以上)のポッドに成熟します。ポッドの色や形は、品種によって種々で、1個のポッドには30~45粒程度の白いパルプに包まれたカカオ豆が入っています。収穫とともに、カカオ豆はポッドから取り出され、パルプが付着した状態で1週間程度発酵されます。発酵中温度が上昇し、カカオ豆が発芽できなくなるとともに、発酵によってチョコレートの香味成分の前駆体が生成されます。発酵後のカカオ豆は、カビが生えないよう天日で十分に乾燥され(一部地域では熱風乾燥の場合も)、麻袋に詰められて、主に船積みで輸出されます。

チョコレートの原材料となる、カカオマスの製造

 カカオ豆には、砂や植物組織等の異物が付着している可能性があり、マグネットや吸引、風力等によるクリーニングがなされたあと、ロースト、ウィノーイング(シェル(豆の外側の皮)とジャーム(胚)を取り除き、ニブ(胚乳)のみを残します。シェル剥離)、カカオニブの粉砕処理が施され、チョコレートの原材料であるカカオマスとなります。方法により各工程の順序は異なります。ロースト中の高温と乾燥で多くの揮発性物質、特に酢酸が除かれて酸味が減少し、メイラード反応をはじめとした化学変化により特有の色や香味を生じます。粉砕処理は、カカオ粒子を小さくする(これ以降の後工程でも粉砕されます)ことと、胚乳からできるだけ多くの油脂を遊離させるために粉砕が行われます。油脂は細胞内(幅20~30μm)に含まれ、粉砕で細胞を破壊することにより油脂が遊離して粘性が低下します。

2019年4月2日 更新

【寄稿】リスクコミュニケーションとハザードコミュニケーション

(一社)食品品質プロフェッショナルズ 西山 哲郎

 食品安全に関するリスクコミュニケーションが関係者の努力にも関わらず、うまくいかないとの指摘が多い。今回は、労働安全衛生や防災などで使われるハザードコミュニケーションと比較することで、なぜうまくいかないかを考えたい。

 食品安全におけるリスクとは、「食品中にハザードが存在する結果として生じるヒトの健康への悪影響が起きる可能性とその程度(健康への悪影響が発生する確率と影響の程度)」と定義されている(内閣府食品委員会)。
 リスクコミュニケーションとは、リスクについて関係者が情報や意見を交換することにある。
 日本の今日における食品は、通常の使い方をしている限りは、ほぼリスクは無視できる。すると、「輸入食品のリスクコミュニケーション」や「食品添加物のリスクコミュニケーション」といったこと自体が、ヒトの健康への悪影響が起きる可能性とその程度がほぼ無視できると考えられ、そもそもリスクがほぼないところで、何の情報や意見をやりとりするのかということになろう。
 同様にゼロリスクはないのだから、無視できるリスクはないとの意見もあろう。食中毒事案はなくなっておらず、今まで見過ごしていた食中毒が科学や関係者の尽力で明らかになっている今日、そのような食中毒を明確にするためにはコミュニケーションが重要であると思われる。ゼロリスクはないのは事実であるが、食品安全上のリスクは、健康への悪影響が発生する確率と影響の程度であるので、確率がゼロであるのか、影響がゼロであるのかは、明確に伝える必要があると考える。おそらく、この世の中、全てのことに確率がゼロということはない。しかしながら、影響がゼロということは多いのではないか。ゼロリスクはないというのは、確率がゼロということはないと言っているのだとしたら、やや乱暴な議論かもしれない。

 さて、労働安全衛生や防災では、リスクコミュニケーションではなく、ハザードコミュニケーションが行われている。労働安全衛生におけるハザードコミュニケーションでは、国連の世界的な制度の下に、日本や欧米でも化学物質を中心に法的な規制がなされている。もちろん、規制にあたって、影響の程度は科学的に検討されているが、コミュニケーションの中心は危ない化学物質を明確にして、それに対する安全策を徹底することである。つまり、ハザードそのものを明確に表示して、周知徹底することが図られている。影響の程度が無視できる化学物質は法的規制の対象ではない。防災においても同様で、影響の程度を科学的に検証した結果、地域の自然災害がハザードマップなどにまとめられ(つまり表示され)、自然災害に対する周知活動が行われる。
 一部の化学物質の規制に関する法令は、規制対象の化学物質を使った小売用の商品にも適用されるが、その時に安全情報はその他の情報と明確に区分することが求められている。塗料でいえば、色やどのような素材に塗布できるかといった商品の選択に関する情報と使用された化学物質の情報は明確に分けられる必要がある。これは、商品の選択に関する情報と安全に関する情報が一括して表示される食品表示とは対照的である。

 ノロ・ウィルス、腸管出血性大腸菌O157、リステリア・モノサイトゲネスなど、食品安全上、健康被害が収まっていないハザードも多い。一部の食品の風評被害につながるといった懸念もあるだろうが、風評被害がでないようにリスクを伝えるのが、本来のリスクコミュニケーションであろう。防災において、不動産価格が下落するので、ハザードマップが改竄されるということがあってはならないように、食品安全リスクも、課題が残っている限り、問題を起こしているハザードのコミュニケーションにもっと注力すべきかと考える。

 東日本大震災から8年経過し、改めてハザードとリスクについて考えてみるのはどうだろうか。

2019年3月13日更新

【寄稿】ISOマネジメントシステムの統合について

(一社)食品品質プロフェッショナルズ理事  髙瀨 正昭

 ISOマネジメントシステムには品質マネジメントシステム(ISO 9001)をはじめ、環境(ISO 14001)、労働安全(ISO 45001)、情報セキュリティ(ISO 27001)等様々なシステムが存在し、事業者が事業運営上必要なシステムを選択し自社の経営の仕組みとして取り入れている。
 これらのマネジメントシステムは、初期の頃は企業経営の仕組みがマネジメントシステムと乖離していることが多かったこともあり、厳密に要求事項を遵守することが求められた。そのため、ISOの為に多量の書類の作成を要求されるなど、経営の効率化とは対極の仕組ととらえられるようになり、ISOは実務と一線を画すものとしての認識を芽生えさせた経緯があることは皆様ご存じのとおりである。
 このようにISOが現実離れをしているという批判は内外から噴出し、問題となったため、これまで数回にわたりマネジメントの本質に回帰すべく改訂が行われ、現在に至っている。
 現在、各分野で最もなじみが深いのはISO 9001、 ISO 14001、 ISO 27001、 ISO 45001(旧OHSAS 18001)等であると考えられるが、これらのマネジメントシステムには統合を視野に入れた、ハイレベルストラクチャーが導入されている。
 ハイレベルストラクチャーとはこれまでバラバラだった規格の章構造が統一され、すべてのマネジメントシステムに適用できる共通の構造、テキスト、用語の定義を定める仕様である。
 この共通という言葉がキーワードとなり、それぞれ個別に認証取得していたマネジメントシステムを一括して取得できるベースが構築されてきている。

 それではこの一括認証が本当にメリットがあるのかどうか検討してみよう。

メリット:
・システム統合により、審査費用のコストダウンが見込まれる
・審査の期間が、バラバラで認証を取るより短期間で済む
・マニュアルが1つで賄える(マネジメントシステムの簡素化)
・リスク管理が効果的に実施可能となる
・マネジメントへのインタビューが1回で済む

デメリット:
・1回の審査日数がかなり長くなる
・事務局の対応が煩雑になる(審査機関との調整、内部監査の実施、他)
・適用範囲がそれぞれのマネジメントシステムで違う場合の対処が煩雑
・第三者審査員がすべてのマネジメントシステムに通じていない場合、
 費用、時間のコストメリットがなくなる

 以上見てきたように、マネジメントシステム自体は統合に向けて整備されているが、審査側、受審側の環境はまだきちんと整備されていないと言わざるを得ない状況のようである。
 特にISO事務局は全てのマネジメントに精通した要員を確保しないと、内部監査や本審査での対応がおろそかになる恐れがあり、またそれらのスケジュール調整に相当の時間がとられることも覚悟しておく必要がある。
 マネジメントシステムは事業継続を効果的に行うための、共通の基準を定めたプラットフォームであることを忘れてはならない。
この原点に立ち返り、本当に統合審査にメリットがあるのかどうかを吟味し、それから実践していくことが何より重要ではないかと考える次第である。

2019年2月3日 更新