【寄稿】日本フードサービス学会 第22回年次大会に出席して

(一社)食品品質プロフェッショナルズ 古川 哲也

 

2017年6月3日土曜日 東京池袋 立教大学5号館で日本フードサービス学会大会が開催されました。

第14回研究助成公募に「鰹節関するHACCPの構築」というテーマで応募をしていたため、助成研究発表がどの様なものか、現場の空気を感じ取るために参加いたしました。

学生の頃によく池袋を歩いていたのですが、10数年振りの池袋の大きな変化のない街並みをみて嬉しくなり、にやにやとしながら歩いておりましたので変質者かと思った方も居たのではないかと思います。
やはり立教大学!! 煉瓦作りの素敵な校舎にお洒落な学生。学生っていいなと改めて思いました。

 

第13回研究助成採択者4名の助成金採択者の研究報告が行われました。
持ち時間20分という短時間の中で研究背景、目的、研究内容、結論までの話をしなければならず、報告者の方々は苦労をされている印象がありました。私は今回はじめて研究内容について話を聞いたので、あの早口で、配布資料の幾つかの説明が割愛され、ほとんど理解ができていないというのが本当のところです。折角1年間研究してきたものであれば、もっと時間を割いてもよいのではと感じております。

大会開催時間は、10時~17時迄なのですが、13時15分~14時35分は2教室に分かれて好きな方に参加ができる仕組みで、この研究報告が5122教室で実施されている裏で、5210教室ではチャレンジセッションが同時進行で実施されておりました。
午前中の研究報告の時には100名くらいの参加者がいたのですが、午後になるとあれ? と思うほど少なくなり30人程度。殆どは午前中の基調講演が終わって帰ったのか? と思っていましたが、実はチャレンジセッションの方に回っていたことがわかりました。
午後の研究報告には30人位しか居ないので、会員は助成金を使って研究をした方にあまり関心がないのかと思いきや……、やはり熱意のある会員がおりました。

ある研究者はうまく報告がまとまらず、その後の質疑応答時に会員から、50万円のお金を助成してもらっているにも関わらずこの様な中途半端な形で良いのか、という厳しい意見を頂いておりました。当然の事だと思います。

今回、私どものテーマは不採択となりしましたが、今後採択された場合はそれなりの取り組みは必要であることを会場の空気から感じ取ることができました。

 

第14回の助成研究のご紹介です。

函館大学商学部准教授 大橋美幸様

「認知症にやさしいまちづくりにおける飲食店の戦略的展望と課題 認知症サポーター店、認知症カフェに焦点をあてて」

今回は1名ですので、来年の研究報告は時間も十分、しっかり出来そうですね。

 

吉野家ホールディングス 河村社長の講演もありました。

河村社長は現在45歳。19歳で吉野家にアルバイトとして入社。5年後の24歳で正社員へ。その後、店長 SV 本部へ異動し、M&Aの窓口業務も担当していたそうです。35歳に「はなまる」へ自ら希望して出向し、38歳ではなまる社長に就任。43歳で吉野家HD代表取締役、45歳で吉野家社長となった方です。

 

一部講演時のメモを基に記しておきたいと思います。

なぜ飲食業は賃金が低いのか?

・差別化が難しく同質化競争になりやすい
・同質化競争の先にあるのは価格競争のみ
⇒その結果、適正利潤を得られず。
その様な事態から脱却するには同質化を避け、競争に巻き込まれない、他社に模倣されない何かが必要。

①品種、種(うどん・はなまる品種の「小麦」の様に、他社が取り扱うことのできないものを開発)
現在検討中の事例として、
血管老化防止する食材、睡眠改善食材、牛丼を食べた時の健康への影響、グラスフェッドビーフだと牧草特有の匂いが肉にでてくるので、それらを改善したもの、ハイパーソニック活用(店内を快適空間にしてしまう)、VR技術の応用

②機械(自動飯盛り機械、卵専用冷蔵庫等)

③商標

⇒吉野家では、究極のところこの3つでしか差別化ができないのではないかと考えている。

飲食業を再定義する

外食産業は、1997年の29兆円がピークで、今は24兆円まで下がってきている。

昔は標準化された店、マニュアル整備、大量買い付けで経営が成り立っていたが、現在はうまく回らなくなってきている。今までは大規模経営、社名が通っていると、地方に外出した際に、知っている店があると味の想像も容易であり、客に安心感を与えることができたが、今はそうではない。食べログ、ぐるなびなど、スマホを手に容易に店の情報が入るようになったので、知らない店でも客が入るようになった。大規模経営、社名が通っているという事が逆に不利になってきている。

 

パネルディスカッション内容(一部抜粋)

・学生はお金、時間を重視し、平均年収は30歳、40歳で幾らになるのかを気にする人が多い。

・一方で、社会貢献度で会社を選ぶ学生もいる。

・学生の2人に1人が奨学金で312万円(利息付)を借りている現実。それを15年で返済しなければならない。月の返済額は約1.8万円である。フードサービス業界に入る際、やはりお金を意識してしまうのは当然のことかもしれない。

・吉野家独自の奨学金制度を作った。平均週3時間働いてくれれば、無利子で貸し出し。そして、そのまま吉野家に入社すると全額免除、他社に行ってしまったら、半額免除。

・学生に外食産業への良いイメージを与えることが課題(外食の仕事はアルバイトというイメージの払拭)。

・なぜ外食産業は人気がないか?
マニュアル化⇒店舗増⇒従業員が考えなくなった。
現在の従業員は食のことが知らなすぎる。知ろうとする努力がない。

・経営学を大学で学んで本当に企業で役にたつのか?

・吉野家では入社数年は経営学など必要ない。現場から叩き上げるので、入社しても、こんな筈では? と挫折してしまう人もいる。

・店長のピープルスキルをアップさせる。モチベーションの低いアルバイトに教えることはやはり大変なことであるが、どの様に人を動かすかという事を学ぶことができる。社長になり、上層部を動かすよりも、店長が現場のアルバイトを動かす方がもっと大変だ。

・役職が上がるにつれて、数値をみて分析をする力は必要になる。

・大学で、飲食業界をもっと贔屓にして欲しい。サービス産業は日本のGDP 70%超なのに、官でも軽い扱い。

・飲食業店長では、短期間に商いを学べる(売上・利益)。

・大学が高校の延長になっているのではないか? 一流企業に行けば大学の知名度が上がるが、実学と学問が一致していない。

・サービス業にはクレームによるテクニックがある(醤油こぼして、お客の服を弁償しますではなく、食事が台無しになってしまい……等)。店で経験できる実学がある。これを何週間か大学生を飲食店に送り込み経験させることも大事ではないか?

などなど。

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すべて記載出来ておりませんが、この様なディスカッションがされておりました。

 

フードサービス産業だけではなく、中小規模の食品加工業も深刻な人材不足が起こっております。大学では名の通った企業への就職斡旋だけではなく、日本を支えている中小企業にも目を向ける本気の取り組みが必要ではないかと思うのです。社名に就職するのではなく学生が何をしたいのか? しっかりとヒアリングをして、インターンシップを通じて学生を適切な企業へと導くこと、そして大学の就職課、教授も中小企業の魅力についてもっと学ぶことが必要かと考えます。先生方が本当の魅力を知らなければ、学生にも伝わることはない。「中小企業もいい面があるのだよ」と言葉でどんなに飾っても、その言葉は学生には響かないと思うのです。