垂直方向の汚染防止、水平方向の汚染防止

海洋大学の博士論文に 垂直方向・水平方向の汚染対策に深く言及しているものを見つけました。
 
 
お忙しい方のために要約を。
 
 総括

 第 2 章で、すしチェーン店 A 社で問題となった大腸菌汚染について、汚染経路が 2 経路あることが判明した。
 
1 つは調理器具の床への直置きなどによる床面から作業台へ汚染が移行する垂直汚染、
2 つはダスターなどによる汚染拡大(水平汚染)である。
 
その結果、両方の段階について対策を講じることが重要であることが分かった。
 
また、ダスターにおいて、大腸菌群の検出は一般生菌数の多少に比例しているが、大腸菌の検出は一般細菌数の多少に関係しないことから、一般生菌・大腸菌群と大腸菌は異なる経路で侵入していると推定された。具体的には、一般生菌、大腸菌群は野菜などの原料から店舗に入り、人由来と思われる大腸菌は地面から靴などを介して店舗に入ってくると推定された。そこで、当面 4 つの対策
 
  1.  垂直汚染を遮断するための調理器具の床への直置き禁止
  2.  汚染拡大(水平汚染)を遮断するためのダスターの管理(使い捨て)
  3. 垂直汚染、汚染拡大(水平汚染)を防ぐための定期的なアルコール噴霧の実施
  4. 店舗外からの汚染を遮断するための靴の履き替え
を行うこととし、その有効性を 364 店舗の実地調査により確認した。
 
また、各店舗におけるパート・アルバイトを年齢、入社後の年数などで層別解析したところ、10 代の若い学生アルバイトグループと、60 歳代以上の男性グループにおいて、手洗いが不十分であることが分かった。
 
です。
 
実際の寿司チェーンでの検証がなされており 空理空論とは違った迫力があります。

2019年10月10日(木)熱殺菌工学(基礎Ⅱ)

熱殺菌工学(基礎I)を受講された方向けの講義内容となります。 

食品産業従事者向け

熱殺菌は 非常に身近な概念として食品業界に定着していますが 他の先進国 特にアメリカと比較して 日本で最も遅れているのが 妥当性確認(バリデーション) と 検証(ベリフィケーションです)。 本講義では レトルト、ホットパック、アセプティック(UHT)の各分野で いかに 妥当性確認と検証を行っていくかの解説をおこない かつ 具体的な事例での判定を行っていただきます。 

【日程】2019年10月10日(木曜)
    9:30~14:50(オプション14:50~15:50)を予定
【料金】4,000円(税込)
    QPFS個人会員の方は2,000円

【場所】関西大学梅田キャンパス(大阪府大阪市北区鶴野町1−5)

【講義内容】

下記の通り 1から3まで 3つの講義を行います。

  1.  基礎Ⅰの復習 
    Fo値の計算を中心として実施し 基礎Ⅰの復習とします。エクセル機能付きのPC/IPad等を必ずご持参ください。エクセルが搭載されていれば スマートホンでも可能ですが 画面が小さい為 やはり PCをお勧めします。
    【時間】9:30~10:30

  2. レトルト、ホットパック、アセプティックの妥当性確認・検証の考え方の解説

    対象菌が異なるため それぞれの分野での妥当性確認・検証もまた異なってきます。レトルトでは 商品が常温保存と言いながらも(賞味期限が長いため、常温とはいいながら亜熱帯的なあるいは熱帯的な気候にさらされることも多く) 耐熱性芽胞が強く意識された妥当性確認となります。また アセプティックの場合 芽胞の示すロングテイル現象のため 超高温短時間殺菌のコンセプトが成り立たず 想像以上に強い殺菌値を与えないといけないということがままありますし、Z値が大きいためどちらかといえば長時間の方向で設計しないといかねいということもままあります。また アセプティックの場合 まだ使いこなれた技術とはいいがたく トラブルシューティングが 妥当性確認・検証となっている事例にもよく出会います。
    【時間】10:40~11:40、12:40~13:40

  3. 妥当性確認・検証の実例

    レトルトの実例をひき 皆様に妥当性確認・検証を体感していただきます。エクセル機能付きのPC/IPad等を必ずご持参ください。
    【時間】13:50~14:50

  4. オプション(参加は自由です:各参加者の抱える課題についての個別相談)
    【時間】14:50~15:50

参加方法

>>>お申し込みはコチラ

【当日の流れ】
・キャンパス1FのTSUTAYA BOOKSTOREレジにて、「講座名・お名前」をお伝えいただき、受講料をお支払い下さい。(事前の受講証等の送付は行っておりません)
・レシート(ご希望の方は領収書)を持って、会場の7階へお上がり下さい。
・無料対象者の方は、直接会場受付までお越し下さい。但し、受講者の管理上、必ず上記申し込みフォームより申し込みを行って下さい。

【和訳】発症までに時間のかかったノルウェーでのサルモネラ食中毒事件

出典:Food Safety News(August 30, 2019)
訳者:広田鉄磨

By Joe Whitworth on August 30, 2019

2017年に ノルウェーのオスロ空港で起きたサルモネラ食中毒事件をもとに 研究者たちは 潜伏期間が長い場合もあることに注意を払う必要があると警鐘を鳴らしている。

2017年9月 単相のサルモネラ・ティフィルリウム属群が ノルウェー国立腸管病原性参照研究所によって特定された。journal Eurosurveillance. によれば 症例の広域分布は 当初 国内全域に配送されている食品の関与を疑わさせた。

発症までの潜伏期間は ゼロから16日で、事件が長期化するにしたがって 潜伏期間が長くなっていった。おそらくは 対策が実施されていくにしたがって 患者が暴露された菌の数が減少していったものと考えられる。サルモネラ菌での典型的な潜伏期間は 6時間から72時間といわれている。

研究者たちは 営業停止と調理場の刷新といった すでに確立されているような環境汚染対策をもってしてだけの衛生管理強化では 汚染源を除去することはできなかったと指摘している。

ジョー&ジュースカフェ

21名の患者は オスロ空港のジョー&ジュースカフェで 食事や飲料を摂った。このカフェは セキュリティーエリアの外にあり 空港を訪れる者であればだれでも利用できる。汚染菌は 汚染された食品または 感染した従業員によって持ち込まれたとみられる。

このカフェでは大量の生鮮食材が加工されているが カフェを経営する会社は ヨーロッパで7か国 ヨーロッパ以外でも事業所をもち グローバルなチェーンの一部として このカフェは運営されている。

患者のうち13名は女性で 年齢でいえば 17歳から60歳であった。患者は ノルウェーの10カウンティ―(県のようなもの)に散らばっていた。国際的な問い合わせをしてみても ノルウェー以外のヨーロッパの国々で症例の発生はなかった。

16の症例の発症時期は特定されており 2017年の8月23日から 11月8日まで広がっていたが 最初の週にほとんどが集中していた。15症例で暴露日と発症日が特定されており 潜伏期間は ゼロから16日で、事件が長引けば長引くほど 潜伏期間もまた長くなる傾向が見られた。8月の潜伏期間のメディアン値は4.5日(分布幅:ゼロから5日)、9月以降は 9日(分布幅:2日から16日)であった。

8月22日から28日までの 初期のケースでは カフェに8月中旬に導入された汚染が原因であったとみられる。続く数週間の間 営業は継続されており その間 客や従業員は その汚染に継続的に暴露されていたと考えられる。8月から11月にかけての 潜伏期間の伸長は 汚染源が(食品起因ではなく)環境起因となり 客はサルモレラに暴露されているものの その菌数は減少していったものとみられる。

2017年9月中旬 ノルウェー公衆衛生機関に属するノルウェー国立腸管病原性参照研究所の人間部門が 反復配列多型解析法が 非常にまれなパターンを示していることを解析した。ノルウェーの5つの市に居住する患者は 発症の前の週には国外旅行をしていなかったと報告していた。

最初の4ケースについて 19ページからなるサルモネラ専用のトローリング調査にかけてみた。この調査ののち 調査を 興味のある分野に絞り込み そこには発症前の国内旅行とオスロ空港のカフェでどのようなものを食したかの質問を含ませておいた。

21ケースのすべてで 2017年8月18日から10月13日の間に カフェで食事または飲料を摂ったことが 明らかになった。患者たちが食したものは 少なくとも 3種類の違うサンドイッチ、7種のフルーツであって 調査したすべてのケースに共通する食材というものはなかった。

 カフェは何度も営業停止し 再開していた

環境のふき取りと食材サンプルが 9月の現地踏査時、および11月の環境拭き取り時にノルウェー公衆衛生機関によって集められた。調理場の排水 水道蛇口、鉄製の棚の上の水滴の合計6つで 症例原因菌が陽性と出た。 10個の食材サンプルはすべて サルモネラは陰性であった。

「調査によって カフェにおける衛生管理のための定常作業の弱点のいくつかが特定された。それには 調理場の清潔区・汚染区の仕分け、作業の目的に応じた洗剤の選択、どのシンクで手を洗い、食材を洗い、皿を洗うのか といったところが注意されるべきであろう。また ユニフォームの洗濯が適切でなく 工程や原材料に関連する潜在的な危険性の評価や管理が欠如していたといわざるを得ない」と調査書は結ぶ。

10月には 会社が集めた環境サンプルが 民間の試験室に送られ分析され、結果は ノルウェーの獣医学研究所に送られて検証を受け、NRLとNIPHで型の特定を行った。カフェの運営会社からは どの食材問屋から食材を調達しかたの記録が提出され いくつかはノルウェーの外からであった。

9月22日に カフェは 10月13日の再稼働まで 暫定的な営業停止を行った。しかし 10月14日に は確定前の予備試験で陽性と出たため 再度営業停止となった。11月7日には 一検体でサルモネラ陽性が疑われ カフェは再度営業停止を行った。11月8日と15日のサンプルでは陰性であり 11月21日の公衆衛生機関での拭き取りでも陰性を確認した。

研究者たちは 営業会社は管理手段を責任をもって実施し それは自発的な営業停止、調理場の刷新 および隅々までの清掃であったが (いったん環境に住み着いてしまったサルモネラという)汚染源を除去するのは困難であった といっている。

「このケースは 環境由来の汚染というべきで 調理場の排水、水道蛇口、鉄製の棚の上の水滴などから採取したサンプルが陽性であったことから そう推定される。製造環境の踏査で 通常の調理場の衛生管理・食材ハンドリングの定常作業には弱点があることが明確となり そのことが 食材の交差汚染の原因となり 事件の長期化の引き金を引いたと推察される」

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訳者追記: いままで 飲食店の衛生管理は 3種の温度管理の徹底であるとか 衛生区と非衛生区の隔離が重要とばかり強調されていたが、 衛生区とは言え 排水溝のない調理場はないといっていいだろう。また グリストラップの清掃など 調理中にやってはいけないといわれながらも 守られていないことも多々ある。今までと多少目線を変えて 使用水ばかりではなく 使用後の水の管理をも主軸に据えるべきではないだろうか

2019年10月9日(水)熱殺菌工学(基礎Ⅰ)

食品産業従事者向け

本年5月27日に熱殺菌工学概論として 開催したものとほぼ同様の内容です。
熱殺菌工学のうち殺菌に関する理論を平易に語る講義内容です。

食品に携わる者にとって「殺菌」は永遠のテーマともいってよいでしょう。なかでも 熱殺菌は、非常に身近な技術でありながらも 基礎を学んだことがないという方は多く存在します。

この度、関西大学梅田キャンパスでは、『HACCP責任者研修』付帯のセミナーとして、熱殺菌に関わる講座を開催し、一般にも開放いたします。通常は「殺菌技術者研修」と呼ばれている内容の中で、特に実践的な部分だけを抽出、さらに強化して、かみ砕いて解説しますので、お忙しい方々でも 短時間で熱殺菌のノウハウを身に着けてもらえます。

【日程】2019年10月9日(水曜)
    9:30~14:50(オプション14:50~15:50)を予定
【料金】4,000円(税込)
    QPFS個人会員の方は2,000円

【場所】関西大学梅田キャンパス(大阪府大阪市北区鶴野町1−5)

  1. 微生物全般と それぞれの耐熱性 
    食品産業で問題となる 食中毒菌の耐熱性 および 腐敗の原因となりがちな耐熱性芽胞菌の耐熱性について説明します
    【時間】9:30~10:30
  2. 微生物の熱殺菌効果計算(実習)
    通常 Fo値と呼ばれているものを中心に 算出方法を解説します。実際に計算を体験していただきますので、ぜひエクセル機能付きのPC/IPad等ご持参ください。エクセルが搭載されていればスマートフォンでも可能ですが、画面が小さい為、PCをお勧めします。
    【時間】10:40~11:40
  3. 熱殺菌機器のあれこれ
    レトルト、ホットパック、アセプティックなど 様々な機器が存在しますが それぞれに対象にできる製品群が異なり、また最終製品の品質にも差が出ます。広範に運用されている機器の特性について解説します。
    【時間】12:40~13:40
  4. 殺菌の検証
    殺菌機そのものの温度分布の検証、製品への熱浸透の検証と、熱殺菌が有効に機能していることを確認するには、国際的には通常二段階のステップを踏みます。日本では一番普及が遅れているコンセプトですが、とても重要ですので 手短に解説します。
    【時間】13:50~14:50
  5. オプション
    参加は自由です。各参加者の抱える課題についての個別相談。
    【時間】14:50~15:50

参加方法

>>>お申し込みはコチラから

【当日の流れ】
・キャンパス1FのTSUTAYA BOOKSTOREレジにて、「講座名・お名前」をお伝えいただき、受講料をお支払い下さい。(事前の受講証等の送付は行っておりません)
・レシート(ご希望の方は領収書)を持って、会場の7階へお上がり下さい。
・無料対象者の方は、直接会場受付までお越し下さい。但し、受講者の管理上、必ず上記申し込みフォームより申し込みを行って下さい。

【寄稿】カカオの育成とチョコレート製造<後編>

(一社)食品品質プロフェッショナルズ 矢野 真理子

チョコレートの製造

 ダークチョコレートは主に、砂糖、カカオマスやココアバターから(ミルクチョコレートの場合、粉乳も)つくられます。製造にあたり、チョコレート中にざらつくような粒子(数十μm以上)を残さないようにする必要があります。微粒化した原材料を使用する場合も考えられますが、工業的にはチョコレートの各原材料を混合してペースト状にした後、レファイナーのそれぞれ回転するロール間の隙間を通して、含まれる固体粒子を粉砕する場合が多いです。粉砕された原料は、コンチェで撹拌回転して練り上げられ、練り上げにより粘度が低下して流動性が付与され、液体のチョコレートとなります。併せて揮発性物質の揮散や均一化による香味変化も生じます。
 液状のチョコレートは、ココアバターが形成しうる複数種類の結晶多形のうち、求める物性の結晶として結晶化させるため、複数段階での温度調整と撹拌といったテンパリングを経て、成型されてから適切に冷却され、チョコレートとなります。

ココアバターの結晶多形とテンパリングについて

 カカオマスには、55%程度の油脂分(ココアバター)が含まれており、ココアバターは他の油脂同様、グリセロール骨格に三分子の脂肪酸が結合した、トリアシルグリセロールの混合物です。うち80%程度が、グリセロール骨格の2-位(2番目の炭素)に不飽和脂肪酸のオレイン酸、1-位と3-位に飽和脂肪酸(主にステアリン酸もしくはパルミチン酸)が結合した構造で、これらが形成する混晶が、多形現象を含めたココアバターの性質を決定しています。
 ココアバターには、6種類の結晶多形が存在し(最新の研究では、うち2種類が中間的な多形で同じとみなせるため5種類との報告もある)チョコレート業界では、1996年にWille and Luttenに命名されたⅠ~Ⅵ型が用いられることが多いです。結晶はⅠ~Ⅵの数字が大きいほど融点が高く、密な構造で安定な結晶です。Ⅰ~Ⅵのうち、割った際の良好なスナップ性とツヤを持つ結晶はⅤ型(融点32~34℃、比較的安定)のみであり、結晶粒径が細かく、口どけがなめらか、室温で溶解しにくく口の中で溶ける融点も含め、テンパリングにおいては、Ⅴ型として結晶化させる必要があります。
 なお、不適切なテンパリングで、Ⅳ型として結晶化させた場合、比較的柔らかくスナップ性がないチョコレートとなり、またⅣ型は時間とともにⅤ型に転移しますが、その際、固体粒子間の油脂が一部表面へと押し上げられ、ブルームが生じます。なおⅥ型(融点34~36℃)はⅤ型より安定ですが、通常の条件で液状のココアバターからは直接Ⅵ型の結晶とはならず、固相転移でのみ生成します。つまりⅤ型として適切に結晶化されたチョコレートも、数か月~数年等の長期保存でゆっくりとⅥ型に転移し、その際ブルームが生じます。

 実際のチョコレートには、砂糖他、ココアバター以外にも原材料が使われるため、分子構造はより複雑です。

2019年5月7日 更新

【2019年5月18日開催】植物工場見学会

当会主催で2019年5月18日土曜日にビタミンファーム福井工場の工場見学会を開催します。

日時

日時:2019年5月18日(土曜日)13時 北陸本線湯尾駅(福井県)集合

見学場所

ビタミンファーム福井工場(福井県南条郡南越前町湯尾15)
※駅で集合してからの移動となります。

セミナー参加費

無料
※ただし、交通費、昼食代は各自ご負担の程お願いいたします。

定員

若干名
※先着順とし定員になり次第締め切ります。
※参加の可否を事務局より別途ご連絡いたします。

注意事項

  1. 湯尾駅は無人駅です。
    コンビニエンスストアなども駅周辺にはありませんので、ご注意ください。
  2.  同業者の参加はお断りする可能性があります。
  3. お勤め先等の記載がないと受け入れ先での登録ができません。
    派遣会社に登録の方は、現在派遣されている先をご記入ください。
    現在お勤めされていない方につきましては、「なし」と必ずご記入ください。
    なお、お勤め先につきましては、入場登録以外での使用はございません。

参加申込方法

参加希望の方は、5月11日(土)23:59までにこちらよりお申し込みください。
なお、締め切り後のお申込みにつきましては無効とさせていただきます。

【寄稿】カカオの育成とチョコレート製造<前編>

(一社)食品品質プロフェッショナルズ 矢野 真理子

カカオの木


先日、プライベートで1時間程度のチョコレートの学習ツアーに参加する機会があり、チョコレートやカカオについて興味のままに調べてみました。自身で十分理解しているとは言い難いのですが、せっかくなので紹介致します。
 なお、メーカーや業界団体等のチョコレートに関連するホームページと「チョコレート カカオの知識と製造技術」(Stephen T Beckett著、古谷野哲夫 訳、幸書房)を参考にしました。しかし、私の独断と偏見で取捨選択、要約や改変等をしています。参考図書には、製造技術、粘度や流動性、分子構造をはじめ、もう少し広範で詳細、かつ正確な内容がわかりやすく説明されています。
 ちなみに写真は、参加したチョコレートの学習ツアーで撮影させてもらった、室内で生育中のカカオの木です。日本だと寒いのでヒーターで温めているそうで、案内員のお姉さんは、自分が案内員として来たときよりも成長していると仰っておられました。

チョコレートの原料 カカオの生育

 チョコレートの原料となるカカオは、中南米を原産とし、赤道をはさんで北南緯20度以内の適正環境地で栽培されます。カカオの木の樹高は12~15メートル程度と比較的低く、熱帯雨林の低層で生育し、商業的農園では、ココナッツやバナナなどを間に植えて陰をつくることが多いです。カカオの木は多くの病気や害虫に晒されており、カプシッド、黒果病、ウィッチズブルーム、カカオポッドボーラー等があります。
 カカオ豆の香味は生産地域により異なりますが、カカオ豆に含まれる油脂も生産地域によって異なり、一般に木の生育地が赤道に近いほど油脂は固い、つまり融点が高い傾向があります。カカオの木には10万個もの小さな花が、枝や幹に咲き、うち一部が5~6か月程度で、10~35cm(200gから1kg以上)のポッドに成熟します。ポッドの色や形は、品種によって種々で、1個のポッドには30~45粒程度の白いパルプに包まれたカカオ豆が入っています。収穫とともに、カカオ豆はポッドから取り出され、パルプが付着した状態で1週間程度発酵されます。発酵中温度が上昇し、カカオ豆が発芽できなくなるとともに、発酵によってチョコレートの香味成分の前駆体が生成されます。発酵後のカカオ豆は、カビが生えないよう天日で十分に乾燥され(一部地域では熱風乾燥の場合も)、麻袋に詰められて、主に船積みで輸出されます。

チョコレートの原材料となる、カカオマスの製造

 カカオ豆には、砂や植物組織等の異物が付着している可能性があり、マグネットや吸引、風力等によるクリーニングがなされたあと、ロースト、ウィノーイング(シェル(豆の外側の皮)とジャーム(胚)を取り除き、ニブ(胚乳)のみを残します。シェル剥離)、カカオニブの粉砕処理が施され、チョコレートの原材料であるカカオマスとなります。方法により各工程の順序は異なります。ロースト中の高温と乾燥で多くの揮発性物質、特に酢酸が除かれて酸味が減少し、メイラード反応をはじめとした化学変化により特有の色や香味を生じます。粉砕処理は、カカオ粒子を小さくする(これ以降の後工程でも粉砕されます)ことと、胚乳からできるだけ多くの油脂を遊離させるために粉砕が行われます。油脂は細胞内(幅20~30μm)に含まれ、粉砕で細胞を破壊することにより油脂が遊離して粘性が低下します。

2019年4月2日 更新

【寄稿】リスクコミュニケーションとハザードコミュニケーション

(一社)食品品質プロフェッショナルズ 西山 哲郎

 食品安全に関するリスクコミュニケーションが関係者の努力にも関わらず、うまくいかないとの指摘が多い。今回は、労働安全衛生や防災などで使われるハザードコミュニケーションと比較することで、なぜうまくいかないかを考えたい。

 食品安全におけるリスクとは、「食品中にハザードが存在する結果として生じるヒトの健康への悪影響が起きる可能性とその程度(健康への悪影響が発生する確率と影響の程度)」と定義されている(内閣府食品委員会)。
 リスクコミュニケーションとは、リスクについて関係者が情報や意見を交換することにある。
 日本の今日における食品は、通常の使い方をしている限りは、ほぼリスクは無視できる。すると、「輸入食品のリスクコミュニケーション」や「食品添加物のリスクコミュニケーション」といったこと自体が、ヒトの健康への悪影響が起きる可能性とその程度がほぼ無視できると考えられ、そもそもリスクがほぼないところで、何の情報や意見をやりとりするのかということになろう。
 同様にゼロリスクはないのだから、無視できるリスクはないとの意見もあろう。食中毒事案はなくなっておらず、今まで見過ごしていた食中毒が科学や関係者の尽力で明らかになっている今日、そのような食中毒を明確にするためにはコミュニケーションが重要であると思われる。ゼロリスクはないのは事実であるが、食品安全上のリスクは、健康への悪影響が発生する確率と影響の程度であるので、確率がゼロであるのか、影響がゼロであるのかは、明確に伝える必要があると考える。おそらく、この世の中、全てのことに確率がゼロということはない。しかしながら、影響がゼロということは多いのではないか。ゼロリスクはないというのは、確率がゼロということはないと言っているのだとしたら、やや乱暴な議論かもしれない。

 さて、労働安全衛生や防災では、リスクコミュニケーションではなく、ハザードコミュニケーションが行われている。労働安全衛生におけるハザードコミュニケーションでは、国連の世界的な制度の下に、日本や欧米でも化学物質を中心に法的な規制がなされている。もちろん、規制にあたって、影響の程度は科学的に検討されているが、コミュニケーションの中心は危ない化学物質を明確にして、それに対する安全策を徹底することである。つまり、ハザードそのものを明確に表示して、周知徹底することが図られている。影響の程度が無視できる化学物質は法的規制の対象ではない。防災においても同様で、影響の程度を科学的に検証した結果、地域の自然災害がハザードマップなどにまとめられ(つまり表示され)、自然災害に対する周知活動が行われる。
 一部の化学物質の規制に関する法令は、規制対象の化学物質を使った小売用の商品にも適用されるが、その時に安全情報はその他の情報と明確に区分することが求められている。塗料でいえば、色やどのような素材に塗布できるかといった商品の選択に関する情報と使用された化学物質の情報は明確に分けられる必要がある。これは、商品の選択に関する情報と安全に関する情報が一括して表示される食品表示とは対照的である。

 ノロ・ウィルス、腸管出血性大腸菌O157、リステリア・モノサイトゲネスなど、食品安全上、健康被害が収まっていないハザードも多い。一部の食品の風評被害につながるといった懸念もあるだろうが、風評被害がでないようにリスクを伝えるのが、本来のリスクコミュニケーションであろう。防災において、不動産価格が下落するので、ハザードマップが改竄されるということがあってはならないように、食品安全リスクも、課題が残っている限り、問題を起こしているハザードのコミュニケーションにもっと注力すべきかと考える。

 東日本大震災から8年経過し、改めてハザードとリスクについて考えてみるのはどうだろうか。

2019年3月13日更新

【寄稿】ISOマネジメントシステムの統合について

(一社)食品品質プロフェッショナルズ理事  髙瀨 正昭

 ISOマネジメントシステムには品質マネジメントシステム(ISO 9001)をはじめ、環境(ISO 14001)、労働安全(ISO 45001)、情報セキュリティ(ISO 27001)等様々なシステムが存在し、事業者が事業運営上必要なシステムを選択し自社の経営の仕組みとして取り入れている。
 これらのマネジメントシステムは、初期の頃は企業経営の仕組みがマネジメントシステムと乖離していることが多かったこともあり、厳密に要求事項を遵守することが求められた。そのため、ISOの為に多量の書類の作成を要求されるなど、経営の効率化とは対極の仕組ととらえられるようになり、ISOは実務と一線を画すものとしての認識を芽生えさせた経緯があることは皆様ご存じのとおりである。
 このようにISOが現実離れをしているという批判は内外から噴出し、問題となったため、これまで数回にわたりマネジメントの本質に回帰すべく改訂が行われ、現在に至っている。
 現在、各分野で最もなじみが深いのはISO 9001、 ISO 14001、 ISO 27001、 ISO 45001(旧OHSAS 18001)等であると考えられるが、これらのマネジメントシステムには統合を視野に入れた、ハイレベルストラクチャーが導入されている。
 ハイレベルストラクチャーとはこれまでバラバラだった規格の章構造が統一され、すべてのマネジメントシステムに適用できる共通の構造、テキスト、用語の定義を定める仕様である。
 この共通という言葉がキーワードとなり、それぞれ個別に認証取得していたマネジメントシステムを一括して取得できるベースが構築されてきている。

 それではこの一括認証が本当にメリットがあるのかどうか検討してみよう。

メリット:
・システム統合により、審査費用のコストダウンが見込まれる
・審査の期間が、バラバラで認証を取るより短期間で済む
・マニュアルが1つで賄える(マネジメントシステムの簡素化)
・リスク管理が効果的に実施可能となる
・マネジメントへのインタビューが1回で済む

デメリット:
・1回の審査日数がかなり長くなる
・事務局の対応が煩雑になる(審査機関との調整、内部監査の実施、他)
・適用範囲がそれぞれのマネジメントシステムで違う場合の対処が煩雑
・第三者審査員がすべてのマネジメントシステムに通じていない場合、
 費用、時間のコストメリットがなくなる

 以上見てきたように、マネジメントシステム自体は統合に向けて整備されているが、審査側、受審側の環境はまだきちんと整備されていないと言わざるを得ない状況のようである。
 特にISO事務局は全てのマネジメントに精通した要員を確保しないと、内部監査や本審査での対応がおろそかになる恐れがあり、またそれらのスケジュール調整に相当の時間がとられることも覚悟しておく必要がある。
 マネジメントシステムは事業継続を効果的に行うための、共通の基準を定めたプラットフォームであることを忘れてはならない。
この原点に立ち返り、本当に統合審査にメリットがあるのかどうかを吟味し、それから実践していくことが何より重要ではないかと考える次第である。

2019年2月3日 更新

【2019年2月24日 大阪開催】特別講演「改正食品衛生法の今後」

ご不明な点につきましては、当団体ではなくKANDAI Me RISE 様へ直接ご連絡ください。

日時

日時:2019年2月24日(日曜日)14:00~16:00
※社員総会終了後の受付となります。
場所:関西大学梅田キャンパス 7階 701号教室 (アクセス

プログラム

講師;森田 満樹氏((一社)Food Communication Compass 代表)
演目;「改正食品衛生法の今後」

セミナー参加費

会員1,500円
非会員3,000円
通学型HACCP講座受講生無料

参加申込方法

参加希望の方は、2月16日(土)23:59までに KANDAI Me RISE 様 お申込みサイト よりお申し込みください。

2019年01月25日 更新